いろいろ情報

Wayback Machine ― Internet Archive 25周年記念連載(第2回)

Internet Archiveという組織をご存知でしょうか? 知らないという方でもWayback Machineという「消えてしまったWebページを保存しているサイト」を知っている人は多いのではないでしょうか。このInternet Archiveが、今年10月29日に25周年を迎えます。そしてボイジャーも今年の10月26日から創立30年目に入ります。それを記念して、ボイジャーとInternet Archiveをテーマとした短期集中連載(全5回)をお送りします。

全世界のWebページを、時間軸にそって記録する

 Wayback Machine。自分で使ったことはなくても、消えてしまったWebページの「魚拓」として見たことがある人は多いでしょう。このWayback Machineは、Internet Archiveによって提供されています。むしろ多くの人にとって「Internet Archive=Wayback Machine」という認識かもしれません。

Wayback Machine

ここにURLを入力すれば、すでに姿を消してしまったWebページも見ることができる(できないこともある)。

その集められた膨大なページ

 前回、書いたように、Internet Archiveの創始者ブルースター・ケールの掲げた目標は「全知識体系への全世界的アクセス(Universal Access to all Knowledge)」でした。そのとおり、集められたWebページの数は膨大です。

その数は、2021年10月時点で、

  • Webページ:5,880億
  • 本とテキスト:2,800万
  • 音声:1,400万
  • 動画:600万
  • 画像:350万
  • ソフトウェア・プログラム:58万


という数に及びます。

消え去るもの、残るもの

 デジタルデータはいくらでも無劣化の複製ができるので、紙よりもずっと「残す」ことが容易です。にもかかわらず紙に比べると消え去ってしまうもののなんと多いことか!

 Webページは公開後にも改訂が容易にできることもあり、また必ずしも後世に残すことを目的にしていない場合もあります。むしろ論文などを除けば、後世に残そうという目的をもったWebページのほうが少ないかもしれません。

 Weyback MachineによるWebページのアーカイブは必ずしも完全ではありません。会員制のサイトや、CGIなどで動的に生成されるページはそもそもアーカイブすることはできません。ですが、それによって知を後世に残すというInternet Archiveの活動が色褪せることもありません。この「後世に残す」という目的はボイジャーとも共通した思いです。

»「第3回 Open Library」に続く

10月22日(金)日本時間朝10時より、From Wayback to Way Forward: The Internet Archive turns 25というバーチャルイベントが開催されます。

ボイジャーとInternet Archive ― Internet Archive 25周年記念連載(第1回)

Internet Archiveという組織をご存知でしょうか? 知らないという方でもWayback Machineという「消えてしまったWebページを保存しているサイト」を知っている人は多いのではないでしょうか。このInternet Archiveが、今年10月29日に25周年を迎えます。そしてボイジャーも今年の10月26日から創立30年目に入ります。それを記念して、ボイジャーとInternet Archiveをテーマとした短期集中連載(全5回)をお送りします。

Ephemeral Filmsとリック・プレリンジャー

 1990年代に、ボイジャーが出版した「忘れられたフィルム(原題Ephemeral Films)」というマルチメディアCD-ROMがあります。このCD-ROM、リック・プレリンジャーという人物が集めていた企業の宣伝フィルムや公共マナーの喧伝フィルムなどを収録したたもので、当時のアメリカ市民の暮らしぶりや夢見ていたものが描かれていてとても興味深いものです。

 このリック・プレリンジャーはInternet Archiveの理事でもありました。そのコレクションを集めた「プレリンジャー・アーカイブズ」もまたInternet Archiveの一大コレクションになっています。

Ephemeral Films 1931-1960

当時のCD-ROMを短い映像で紹介しています。

Book Server構想、そしてボイジャーの参加

 ボイジャーが実際にサンフランシスコにあるInternet Archiveを訪れたのは2010年のことです。

 当時のボイジャーでは「ドットブック」というフォーマットで、シャープのXMDFとともに、日本における電子書籍のデファクトスタンダードの位置にありました。しかし「電子出版の普及には、世界の標準が必要」との考えから、EPUBという世界標準のフォーマットに積極的に関わり始めました。

 さらに世界の標準のフォーマットができたらその先にあるもの、それは私たちが自由に電子書籍を活用できる仕組みです。Internet Archiveでは「Book Server構想」として、それに取り組んでいました。ボイジャーもその構想の正式メンバーとして推進に参加することに合意しました。

Internet Archive本部にて、創始者のブルースター・ケールとボイジャー代表取締役(当時)萩野正昭。

 この写真に写っている人物が、ブルースター・ケール。Internet Archiveの創始者です。活動の目標として「全知識体系への全世界的アクセス(Universal Access to all Knowledge)」をかかげています。

 私たち一人ひとり、あるいは一企業・団体ができることには限界があります。世界の標準と調和し、手を取り合うことが重要と思い知らされたことでした。

 ブルースター・ケールと、当時のプロジェクト中心メンバーであったピーター・ブラントリーへのインタビュー動画もご覧ください。

「Book Server」を語る

ブルースター・ケールとプロジェクト中心メンバーであるピーター・ブラントリーへのインタビュー動画。

»「第2回 Wayback Machine」に続く

10月22日(金)日本時間朝10時より、From Wayback to Way Forward: The Internet Archive turns 25というバーチャルイベントが開催されます。

国語の先生のための電子ブック入門講座【動画公開】

都留文科大学 野中潤 教授の声がけで行われた「国語の先生のための電子ブック入門講座」。動画が公開中です。電子ブックの作り方と作品事例を1時間でコンパクトに紹介しています。

 

先生方に限らず、電子ブックを自分で作ってみたい! という作家のみなさんの背中を押してくれる動画です。ぜひご覧になって、調べ学習、自分の活動のまとめ、創作のアウトプットにRomancerを活用してみてください。

 

 

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コッチがメインになるってこと! ―さいとう・たかを先生ロングインタビュー

2012年2月、ボイジャーの理想書店にて「ゴルゴ13」を販売開始する記念として、ご多忙のさいとう・たかを先生にインタビューのお時間をいただきました。そのインタビューをRomancerにて電子書籍にして無料公開いたしました。


なかでもご注目いただきたいのは「コッチがメインになるってこと」という章。iPadのゴルゴ13を読みながら「電子書籍」についてのこの言葉、

私は昔から言ってたんですよ!

コッチがメインになるってことをね。

Romancer作家の皆様には、是非とも読んでいただきたいと願います。


さいとう・たかを先生が逝去されました

劇画家のさいとう・たかを先生が、2021年9月24日、膵臓がんのため逝去されました。


さいとう・たかを先生と言えば、だれでもすぐに『ゴルゴ13』が頭に浮かぶでしょう。それ以外にも主な代表作に『台風五郎』『無用ノ介』『デビルキング』『バロム・1』『影狩り』『雲盗り暫平』『サバイバル』『劇画・小説吉田学校』『仕掛人 藤枝梅安』『鬼平犯科帳』『剣客商売』など多数あります。『バロム・1』はなかなか異色で、特撮テレビ番組『超人バロム・1』(放映期間1972年4月2日-11月26日)の原作でもあります。


そして、さいとう先生の大きな功績として「コミックの分業形態での制作システム構築」があります。そのシステムのもと、これからも『ゴルゴ13』は続きます。


謹んでさいとう・たかを先生のご冥福をお祈りいたします。


弊社が運営する「理想書店」でもさいとう先生のタイトルを扱わせていただいております。


2021/10/1 追記

理想書店でさいとう先生のタイトルを扱わせていたときのロング・インタビューを公開しました。こちらもぜひご覧ください


独・メルケル首相の言葉を読み返す

16年間の任期を終え、26日ドイツ総選挙をもって引退をする独・メルケル首相。ロマンサーでは2020年3月より、メルケル首相の演説を3回に渡りデジタル出版で発信しました。

 

日々流れてくるニュース・SNSの情報も大事ですが、読み返されるべき情報をきちんと残すこともまたデジタル出版の重要な役割だとロマンサーは考えています。

 

コロナウイルスという未知の脅威に対し、リーダーシップを持って呼びかけた彼女の言葉を今一度読み返してみてください。

 

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時は過ぎても終わらない

20年目の9.11を迎えた。だからといって地球上の〝戦争〟は決して終わっていない。振り返っていつ、誰が、どこではじめたものなのか、意図をもって仕掛けられたものなのか、じっと考え見つめてみる機会はあるのだろうか。あるとすれば、記述された記録は大きな力となってくる。20年前の、いやもっとその前に記録されたテキストを読み直すことがデジタルによって成り立っていく次の世界は必ずやってくるだろう。そのとば口にようやく私たちは立ったのではないか。  
9.11を迎えた今日、片岡義男の4つのテキストを読まれたらどうでしょうか。すべて、Romancerでつくられたものです。詳細は以下をクリック!
 
 

佐藤秀明・写真集『REQUIEM WORLD TRADE CENTER』
世界貿易センタービルの建設前の風景から記録された1970年代ニューヨークの光景が輝いている
 

祝!「青空文庫」の大久保ゆうさん、翻訳本を出版

インターネットの電子図書館「青空文庫」の活動を続けている大久保ゆうさんが、フィルムアート社から翻訳本を出しました。題名は『文体の舵をとれ』(2021年8月刊行 2,000円+税)。
 

『文体の舵をとれ』と題する本書は、『闇の左手』や『ゲド戦記』といった代表作で知られるSF・ファンタジー作家のアーシュラ・K・ル=グウィンが、小説を書こうと志す十四人の生徒と一緒になって行ったワークショップをもとにする、小説教室である。
(毎日新聞 2021年9月4日号「今週の本棚」より)
 
むむ? 見覚えのある説明です。
そう、グインサーガ(同じグインでも違うけど)の作家中島梓/栗本薫先生が「小説道場」をやっていました!

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〝決して戦車や武器では解決しない〟

 

戦争は世界のどこにでも生まれている
殺し合いの兆候はあなたの隣に潜んでいる
本日、片岡義男.comで公開の写真家・佐藤秀明氏の連載「世界地図の歩き方」は、『銃器製造の村 ダラ』と題して、パキスタンとアフガニスタン国境の街ペシャワールの状況が語られています。1977年当時の話です。それから40数年後の今、アフガニスタンでタリバンが国を制圧するなんて、今までどこの報道メディアが私たちに伝えたでしょうか? そうなったら、今度はしゃあしゃあとタリバン内部の抗争を語り続けています。ずっとこの国にあって戦い続けていたタリバンのことなど何も知らされてきませんでした。でも、自分でよく考えてください。アフガニスタンはどうしてこんな状態になったのでしょう? 戦争を仕掛けたのは誰だったのでしょうか? 日本は何をしてきたか。その土地で水を得るために働いた一人の医師がいたことだけが、私たち日本人にとってのか細い救いであったことを思い起こして欲しいです。

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地域の魅力がギュっ! 電子図書館の独自資料【5選】

電子図書館の独自資料

コロナ禍で注目を集めている「電子図書館」

 

突然ですが、みなさんは公共の電子図書館サービスが全国に何館あるかご存知でしょうか? 電子出版制作・流通協議会の調査によれば、2021年7月1日時点でなんと222館! 1年前の97館からプラス125館となりました。

 

取り扱っている電子書籍は出版社の本に限らず、地域独自のオリジナル作品がいくつもあります。今回のコラムでは、地域の独自資料を「誰でも読める」電子図書館を5館紹介します。

 

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ボイジャー社、夏のインターン

ボイジャー取締役萩野正昭とインターン生

コロナ渦ではありますが、ボイジャー社5日間のインターンシップが終了しました。今年は専修大学から2名が参加。「電子書籍を作る、読む」というテーマで、課題に取り組んでもらいました。早速、2人の電子本を見てみましょう。

 

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追悼・ありがとう 富山妙子さん

萩野正昭

 
 あなたが語ってくれた数々のお話、描いた絵画、書き残されたことば、これらをいま熱く胸に抱きしめるように、あなたをお送りしたいと思います。

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戦争を想う

76回目。終戦のその日がやってきました。敗戦と言わず終わりとして気を穏やかに保ちたいと、数えればとんでもない回数を過ごしてしまいました。すでに戦争をした跡形も、もうどこにもない。最近では佐藤秀峰『特攻の島』にそれを見た記憶ぐらい。この忘却をよしとするのか。

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片岡義男は俳句が上手

装丁の平野甲賀さんがこの世を去って早くも4ヶ月が経過します。こうなってしまって「甲賀文字」を改めて見つめています。壁に掛かったこの文字。なんとも言えない滲み出る愛情が伝わり心を揺すぶらないでしょうか。

 

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この道を「無」から歩いてきた──萩野正昭・落合早苗『現代ビジネス』に記事掲載!

 
8月3日、インプレス発行「電子書籍ビジネス調査報告書」2021年版が発行されました。軌を一にして、講談社のネット情報誌『現代ビジネス』に、この世界の鋭意なライターである飯田一史さんのインタビューで落合早苗さん、そしてボイジャーの萩野正昭が語ります。
 
 

現代ビジネスの記事はこちら
前編 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/85879
後編 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/85880

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縦書きで「アルファベット」うまく扱えますか?

横向きが正解? それとも縦向き?
今回は縦書きでアルファベットを扱うときのコツをご紹介します。
 
アルファベットについて考えたことがなかった、という方も多いと思います。そんな方もまずはこちらの文章をご覧ください。
 

 
特別な操作をせず縦書きの文章を作成すると、アルファベットがすべて横向きになります。
違和感のある部分がいくつか見つかると思います。特に「Tシャツ」がわかりやすいですね。
 

「T」は横向き、「シャツ」は縦向き。ちょっとおかしい。
 
どのように直せばよいでしょうか。

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ロマンサー作家が14,000人を超えました!

Romancerの登録者数が14,000人を突破。つくられた作品数の合計は100,000作品を超えました。ご利用いただいている皆様へ厚く御礼申し上げます。
 
2014年7月の一般公開から7年。皆様から多くのご意見とご感想をいただき、Romancerは成長してきました。決してひとりではできませんでした。Romancer、そしてVOYAGERと関わっていただいた皆様へ改めて感謝申し上げます。誠にありがとうございます。
 
今年2021年6月には新ツール『NRエディター』を公開することができました。これからもWeb出版の可能性を求め、皆様へ新しい提案をしてまいります。
日々成長していくRomancerを今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
 
【プレスリリースはこちら】  

事実は見えるものだけじゃない

大雨ニュースを見ていました。あの激しい土石流の映像に目が釘付けになりました。こういうものかと一見で分からせられた映像でした。同時に、激流に呑まれた人たちがいたこと、何人かは流れの突き進んだ海上でご遺体の発見だったこと。絶句しました。
 
呑み込まれるか、スマホを廻すか、同じ場所に立ちながら、若干の位置のズレが両者を分けたのでしょう。ほんのわずかな差の中にあるこんなに大き違いを一瞬に理解します。誰もが記録するカメラをもっている時代、記録の方法が文字を書くしかなかった時代との大きな変化を感じます。しかし、映像だろうと文字だろうと、記録を生かすルートを自分で掴んでいるとは言いがたい。何か自分以外のメディアがそれを利用する世界は、かなり、まだまだ、続いていくしかないのか、と、ちょっと弱気が残ります。
 

事実とは見えるものにはなく、見ている人の中にある。
9.11 撮影:Patrick Witty

デジタルが先、紙は後!

デジタル出版のゴールは電子書籍、とは限りません。 

 

今回は『デイドリーマーズ』という紙の本を紹介します。
この本は、デジタルハリウッド大学の新入生研修2020で制作されたアンソロジーです。

学生に与えられた研修課題は「アフターコロナの世界観を舞台とする物語を作る」こと。そして、それを電子書籍として作ることが課題でした。

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