お知らせ
2025年2月19日
あなたは今、どうやって本を読んでいますか?
スマートフォン? タブレット? それとも紙の本?
実は、私たちが当たり前のように楽しんでいる読書に、大きな壁を感じている人たちがいます。最新のデータ*によれば日本には、視覚に障がいを持つ約27.3万人の方々(全体の6.6%)がいるのです。彼らにとって、画面に表示される文字は、必ずしも「読める本」とは言えません。
ここでみなさんに知っていただきたいのは、少しの工夫と思いやりがあれば、電子書籍による「聞く読書」がとても快適になるということです。文字情報を適切に設定することで、音声読み上げ機能を活用し、耳で文章を楽しむことができます。
高齢で文字が見づらい方、通勤中や家事の合間に本を楽しみたい方、目の疲れを感じている方など「聞く読書」は想像以上に多くの人に役に立ちます。
では、具体的にどのような点に注意して電子書籍を制作すれば良いのでしょうか?
私たちボイジャーは、30年デジタル出版に携わって得た知識と経験を活かし、『アクセシブルなEPUB制作 8つのポイント』というガイドブックをまとめました。

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8つのポイントサマリー
- テキストで表現可能な部分を画像にしない
- 意味の通じないテキストは使わない
- 改行やスペースによるレイアウトをしない
- 読み間違いやすい本文の語句にはルビをつける
- 見出しをつけ、正しくレベル分けする
- 画像には画像の説明テキストをつける
- 画像の色やコントラストに配慮する
- リンクの飛び先を分かりやすくする
これらのポイントは非常にシンプルで、「なんだ、それだけか」と思うほど簡単かもしれません。しかし、例えば、画像の代わりにテキストで説明できる部分を設けたり、難読語や固有名詞にはルビ(読み仮名)を付けるなど、これらの工夫を凝らすことで、読書環境が格段に良くなることを解説しています。
誰もが平等に読書を楽しめる世界を目指して、少しの工夫と思いやりを持ってデジタル出版にチャレンジしてみませんか?
*身体障害者総数:NICT
https://barrierfree.nict.go.jp/relate/statistics/population1.html?glarity_translate=1
◆ ◇ ◆
本ガイドの推薦コメントをいただきました!
田中敏隆 株式会社小学館 取締役
このようなガイドは必要なので大事だなと思っています。
ポイントの1つ「テキストで表現可能な部分を画像にしない」ですが、異体字を紙の本で使っているのを電子でUTF-8とかの範囲にすることは著者の理解と編集者の理解が要ります。やっぱりルビでしょう。
「画像には画像の説明テキストをつける(通称、代替テキスト ルビ不可)」は、代替テキストは難しすぎるので、障害者の方たちにとっては、本文で表や図を説明して、無くても成立するように作るのが正解だと思います。
利用者の区分で必要な案件を分けようと思っています。ルビは、こどもには必要、画像化された文字の読み飛ばしは何とかしよう、大人向けの読み間違いはOKとか。単一な基準ではなく、利用者で分けられるのではと思っています。
小野寺優 株式会社河出書房新社 代表取締役社長
アクセシブルな電子書籍制作について、これほど丁寧に、わかりやすく教えててくれるコンテンツがこれまであったでしょうか。これを機に、誰でも読書を楽しめる社会の実現に向け、ひとりでも多くの出版者が取り組まれることを願っています。
鈴木英治 大日本印刷株式会社 出版イノベーション事業部 部長
最初に、電子図書館プラットフォーム事業者として、本書のリリースを歓迎します。
当社DNPは、出版印刷事業を祖業として発展させる中で、本に触れる機会や読書体験を増やすという社会課題に取り組んでおります。その活動では、冊子体の本を生活者に届けることと、デジタル技術を活かして情報として合理的に配信することの両方とも大切に考えています。どちらも、筆者の考えや情報を正しく届けるという役割は変わりませんし、どちらにもメリットがあります。電子図書館事業は、後者のアプローチでコンテンツの持つ力を広く正しく伝える役割を果たします。電子図書館サービスを支えるのは、安心・安全なITインフラと、電子書籍コンテンツが重要な構成要素です。電子書籍コンテンツの普及に資する本書の発刊は、社会にとっても当社にとっても意義ある活動と感じております。
良いサービスの条件は、社会・市場の要望に合致しており、簡単に入手でき、普段の環境で気軽に利用できる、ということかと思います。リフロー型EPUBの電子書籍は、電子書籍販売サイトや電子図書館サービスで広く提供され、閲覧可能なビューアの選択肢も豊富なことなら、この条件に合致しています。
残る課題は、コンテンツの供給能力になりますが、制作者の人口自体は多いので潜在課題はクリアしています。あとは、できるだけ独自性を排して、シンプルに標準的に制作することです。本書では、リフロー型EPUB制作方法を8つのポイントで(たった8つに絞り込んで!)、とてもシンプルに解説しています。電子書籍・電子図書館サービスの普及促進につながるガイドラインと確信しております。
電子図書館サービスは、一般書籍・児童書といった、商用の電子書籍だけではなく、各自治体・図書館が保有する郷土資料、広報資料などの独自資料をデジタル化し、保管、公開、活用することも重要な役割と捉えております。そのためには、これまでのアプローチのようにデジタル化することだけに留まるのではなく、アクセシビリティ、情報リッチ化による多様な表現(体験価値)、データ活用の為の構造化、といった付加価値が求められます。自治体が持つ多くの独自資料をリフロー型EPUBとして制作することは、資料にこのような新たな価値をプラスすることにつながります。
本書が提唱する8つのポイントは、当社が電子図書館事業者として、推奨したいルールです。
私たちDNPが提供する電子図書館サービスに、ボイジャー社のBinBビューワを採用したのは、ITリテラシーによらず誰もが使えるようなブラウザビューワを求めたためです。いかに生活者に負担をかけず、サービスの利用に繋げるかを常にこだわってきました。今後も、ボイジャーさんと協力し、両社のデジタル技術を掛け合わせて、電子図書館サービスの普及発展、そして新たな価値創出につなげていきたいと考えています。
渡辺政信 日本出版インフラセンター 専務理事
制作「ガイド」も出版社に是非お薦めしたい内容に仕上がったと思います(最終章の辺りの「印刷本はツルツルした紙の束」の章で、御社の志の原点の一つが理解できました。長いお付き合いなのに、これまで気づかなかった不明を恥じております)。「編集者のための「聞く本」制作」の章ですが、当たり前ですが、制作したものを編集者自身が聞いてみることの大切さ、がよく理解できました。全体の構成としては、①EPUBリフローが良い、との結論があって②読み上げ対応制作にあたって、陥りやすいポイントを8つ挙げ③実際の制作のプロセスを解説し④実際に聞いてみて確認(TTSのための「校正」?)するためのノウハウ、となっており、実制作者向けのガイドとしてよろしいと思います。
佐藤聖一 埼玉県立久喜図書館 バリアフリー読書推進担当
書かれているように、障害者の情報バリアフリーのためにはアクセシブルなEPUBによる電子書籍の刊行がカギであると思います。画像の代替テキストの必要性と、その具体的な方法を示していただいたのはよかったと思います。
最後の方で、音声化をホスト側で行う場合と、ブラウザ側で行う場合の比較をしています。ホスト側で行う問題点として、著作権許諾と費用がかかることを示しています。その他に、誤読を直すことは現実的に難しい(人件費がかかる)、読み方をユーザーが変えられないなどもあるかと思います。ブラウザ側で行う方法だと、誤読を含めて漢字の文字を確認できる。読み上げのスピードや声の種類などユーザーが聞きやすく変更できるなどの利点があるかと思います。
匿名希望 情報アクセシビリティ分野の研究者
ウェブページ拝読しました。すばらしいと思います。
多くの方々に読まれて、アクセシブルなEPUBリフローの電子書籍が作られることを期待します。