出版印刷の源 グーテンベルクの印刷の魔法を体験

グーテンベルク活字の画像

 

印刷博物館(東京都文京区)で「黒の芸術」展が 2025年7月21日(月・祝)まで開催中です。

15世紀なかばに製作されたグーテンベルクの印刷機の想定復元、当時の印刷物など多くの展示を行っています。デジタル出版はアナログの出版を真似して登場しました。ぜひ会場でご覧ください。

 

 

◆印刷博物館「黒の芸術 グーテンベルクとドイツ出版印刷文化」
会期:2025年4月26日(土) ~ 2025年7月21日(月・祝)
休館日:毎週月曜日(ただし、7月21日は開館)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
入場料:一般1000円、学生500円、高校生300円、中学生以下無料
住所:東京都文京区水道1丁目3番3号 TOPPAN小石川本社ビル

 


印刷博物館会場入り口にある「黒の芸術」展ポスターの写真

印刷博物館会場入り口にある「黒の芸術」展ポスター

印刷博物館はTOPPAN広報活動の一つで、創業100周年記念事業として2000年に開館。2020年にリニューアル。約20名のスタッフが、館の運営や日頃のワークショップを担当している。

 

展示中の展示中の木製手引き印刷機(複製)の写真

展示中の木製手引き印刷機(複製)

毎週土日および祝日15時から、活版印刷の実演を見ることができる。

 

活版による印刷は普段目にすることがありません。目にするとすれば、古本屋にある昭和初期の書物、あるいは、開店したばかりのおしゃれなお店のカードくらいでしょう。

 

印刷博物館は、印刷業大手のTOPPANホールディングス株式会社が運営しています。

TOPPANではかつて活版印刷を行なっていましたが、今では現場を知るスタッフも少なくなりました。そんな中、2025年6月7~8日に印刷博物館で、「黒の芸術」展の特別ワークショップ「復元活字で42行聖書の組版に挑戦」が開かれました。応募総数383人、当選者8名、倍率48倍だったそうです。

 

ワークショップの様子を印刷工房インストラクターの方にお聞きしました。

——いつごろから準備を始めたのですか?

 

「黒の芸術」展は2022年ごろから準備を始めました。会期が終了しないとわかりませんが、現状、たくさんの方にいらしていただいています。当館はドイツのマインツにあるグーテンベルク博物館と協力協定を結んでいますが、グーテンベルク博物館は2030年頃までリニューアル中です。一部の展示品を借りられそうだということで、企画が進みました。

——ワークショップの企画のきっかけは?

 

「活字を使って何かしたい」と考えたからです。普段は、42行聖書の復元活字はしまいこまれていて、出番がありません。「黒の芸術」でワークショップを開けば、自分の手で活字を組んで印刷物を完成させる体験をしてもらえます。活字を使って印刷物を作るのはとても面白いことなんです。グーテンベルクの42行聖書に使用された「ブラックレター」を使ったら、きっと楽しい体験になると考えました。でも工房の設備の関係で8名の方しか、お招きできませんでした。

——活字を組むという組版の作業で難しいところはどこですか?

 

参加した方は、ドイツ語を勉強している方、カリグラフィーが好きな方といろいろでした。20代の方は1名だけで、他は40代〜50代の方でした。

当日は、参加者の方に1行ずつ、組んでいただきましたが、平均で1行組むのに30分くらいかかりました。当館のインストラクターでもブラックレターの活字を組むとかなり時間がかかります。最近はドイツ人でもブラックレターを読めない人が増えているそうです。

 

当館が所有している42行聖書の復元活字は241種で、正しく選んでもらうためにヒントを用意しました。それでも難しかったようです。なぜかというと「a」という字でも数種類、「po」という合字でも2種類あります。異体字や合字も多くあり、その中で違いを見分けるのは難しいのです。一度でOKだった方は、ヒント通りに組んだ方で、他の方は、試し刷りのゲラを見て修正するということを何度か繰り返しました。

印刷博物館所有の42行聖書零葉から、民数記の一部の7行を抜粋した写真

印刷博物館所有の42行聖書零葉から、民数記の一部の7行を抜粋

ワークショップ参加者は3行目から6行目を1行ずつ、担当。残りはインストラクターが担当した。

 

完成した印刷の写真

 

ワークショップでは一人3枚を印刷。印刷後、インキが乾くまで紙立てに置いておく。

赤色と青色の文字はグーテンベルクの42行聖書では、手作業の装飾がされた部分。

ワークショップでは黒色インキで本文を印刷したあと、樹脂版を用いそれぞれの色で印刷した。

 

印刷機の写真

印刷博物館工房でのワークショップで常時利用している簡易活版印刷機

——ブラックレターは欧米では「ゴシック体」と呼ばれているようですが、日本の「ゴシック体」とはかなり違ってみえます。どうしてなのでしょうか?

 

日本でいうゴシック体は、欧米では「サンセリフ体」とよばれます。

欧米ではゴシック体といえば直線的で黒々とした、書体によってはひげのような装飾がついた文字のことを指し、ブラックレターともいわれます。

グーテンベルクは、それまで羽根ペンで手書きしていたラテン語の聖書を複製するために、ブラックレターの活字を作りました。

木製手引き印刷機(複製)
印刷実演での印刷物

木製手引き印刷機(複製)印刷実演での印刷物

——グーテンベルクのすごかったところは何だと考えていますか?

 

印刷機、活字、インキ、それぞれの発明を組み合わせた総合的な活版印刷技術の発明だというところがすごいと思います。今では活版は主流の印刷技術ではありませんが、デジタル出版であっても、その基本はグーテンベルクが作ったものにあると思います。

グーテンベルクが制作した活字は約270種だったといいます。ラテン語の聖書を印刷するには、標準となるアルファベットの大文字、小文字のほかに異体字、合字、略字記号がついたもの、句読点などが必要でした。

 

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