知を未来へ残すこと ― Internet Archive 25周年記念連載(第5回)

Internet Archiveという組織をご存知でしょうか? 知らないという方でもWayback Machineという「消えてしまったWebページを保存しているサイト」を知っている人は多いのではないでしょうか。このInternet Archiveが、今年10月29日に25周年を迎えます。そしてボイジャーも今年の10月26日から創立30年目に入ります。それを記念して、ボイジャーとInternet Archiveをテーマとした短期集中連載(全5回)をお送りします。

本は売って終わりじゃない

 出版をビジネスとしてとらえれば「売れる本」を売れば終わりです。しかし私たちは、なぜ出版という行為を行おうとするのでしょうか?

 出版とは、自らの、考え、情報、物語を、自らの責任で世の中に発信する行為です。著者にとっては、本を売ってお金を稼ぎたいという以上に、自らの出版した本を後世に残したい、自分が生きた証を残したい、という欲求はごく当然のものと言えるでしょう。

 しかし私企業にできることには限界があります。永久的な保存を担保することはできません。

片岡義男全著作電子化計画と国立国会図書館デジタルコレクション

 後世に本を残す役割を担っているのが、国立国会図書館です。

 紙の本では納本制度が確立しています。しかし、実は現時点(2021年10月現在)では有償で販売されている電子書籍の納本制度が確立していません。

 そこでボイジャーでは国立国会図書館に働きかけ、まず片岡義男作品を国立国会図書館デジタルコレクションに提供することで電子納本を開始しました。(プレスリリース「作家・片岡義男小説(449作品)、国立国会図書館の電子閲覧公開へ」)

 今後、理想書店の作品も同様にデジタルコレクションへの提供を予定しています。

国立国会図書館デジタルコレクション

ボイジャーが「電子納本」した片岡義男作品の閲覧は館内限定。検索時には「国会図書館内限定」をチェック。

作る、見る、売る、残る

 ボイジャーのWebサイトでは「作る、見る、売る、残る」をスローガンにしています。

  • 作る:自力でデジタル出版する人を支援するWebサービス「Romancer
  • 見る:電子書籍をWebブラウザだけで見ることができる「BinB
  • 売る:個人の作品でも販売できるプラットフォーム「理想書店
  • 残る:国立国会図書館デジタルコレクションとの連携。

 

 ボイジャーもInternet Archiveと同じく「将来に知を残す」というゴールをもっています。自書を出版したいという作家の思いを形にする。それがボイジャーのテーマです。

»(完)Internet Archive 25周年記念 短期集中連載

この連載の内容を、電子本としてもお読みいただけます

本書はRomancerのNRエディターで作られました。

 

1996年、創設者のブルースター・ケールがその壮大なプロジェクトを語る25年前の映像が残っていました。2分少々です。本動画はInternet Archiveで公開中の短編ドキュメンタリーを日本語吹替でお届けするものです。https://anniversary.archive.org/