絵もない 花もない 歌もない

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……ある歌謡曲が気になるひと言ふた言を流してきた。まるで私たちがつらぬこうとしているデジタル出版を嘲笑あざわらっているのか、揶揄やゆしているのか。「ない」「ない」「ない」を生きてきた私たちにとって「絵も」「花も」「歌も」なかったのは事実だったし、人気のデュエット曲だからといって年中耳にするものでもない。聞き流せばそれでいい、と一瞬にそう思っていたのだが、こう続けてきた。

 

飾る言葉も、洒落もない、そんな居酒屋で……。

 

五木ひろしと木の実ナナがありったけの歌唱力で歌い切る。そうか、洒落もなかったか。

 

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上村一夫のイラストを前面に、レコードメーカー7社合同企画『阿久悠メモリアルソングス』発売中

 

唾を飲んで黙るしかなかった。チクしょうと思いながら、どうしようもない悔しさが湧き上がってきた。歌を聴き、なにを思うかは勝手であろう。いいじゃないか、そのまま歩いていけ。胸を張ることもないさ。ただただ行くしかない。街には幾多の曲が流れている。ある意味でそれは私たちを応援しているんだ。だって、幸福なヤツに向かって作詞家は詞など書きはしない。絵もない 花もない 歌もない 飾る言葉も 洒落もない。そんなお前たちにも出会いがあり、信じ合えるお相手だってきっと生まれていくことだろう。彼はそう書いて一足先にこの世を去っていった。

 

Romancer Cafeで私たちが連載している『阿久悠と歌謡曲の時代』が第二部へ突入する。“『ざんげの値打ちもない』という夜明け”と題している。これも「ない」からはじまったのだ。しみじみ歌詞を聞いてみた。やっと十四に なった頃、すねて十九を 超えた頃……

 

そしてこうして 暗い夜

年も忘れた 今日のこと

街にゆらゆら 灯りつき

みんな祈りを するときに

ざんげの値打ちも ないけれど

私は話して みたかった

  

揺らいだ心を支え合おう。そんなデジタル出版で話してみないか、みなさん!

 

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北原ミレイさん、阿久悠さんの未発表作品含むニュー・シングルをリリース

作品サイトへ:クラウン徳間ミュージックショップ

 

写真提供:オフィス・トゥー・ワン