病気のことなど考えたくもない!

そりゃそうだとも。健康なあなたにとって病気など、どこ吹く風と思っていることだろう。でも必ず病気はやってくる。きっと駆け足で。そうなった時……あなたは病院の群れの一人となり、渦の中に木っ端のごとく孤独の淵に追いやられていく。経年の健康変化を通し助言する医師はいるのか? 誰があなたの健康を見守るだろう。出会う医師の一人もなく、ひたすら待ちつづける長い列のなかで浮き沈みを繰り返し、仰ぎて現れるクモの糸にすがるだけなのだろうか。

 

デジタル出版がスタートした25年前、そこで何かを書こうとする人たちのことごとくが幸福から見放された人たちだった。失業、破綻、老残……そして、必ず病気という本人をとりまく世界がそこにあった。デジタル出版と称して、初めて向かい合った現実の姿をまざまざと見せつけられた。通り過ぎてきた世の中を一皮めくってみれば、蠢く声のなんと声高いことであったか。忘れることはできない。

 

少し冷静に病気と自分のことを考えてみよう。病気にもいろいろあるだろう。一概に一口で言い切れるわけではない。でも個々の病気の専門医がいるのだとしたら、その先生をどんな方法においても知り、訪ね、診断を受け、そして経過を見ていくことは欠くことのできない治療の基本ではないか。こうした病気との長い闘いを一人の医師と共に経験した観点から一冊のデジタル出版が試みられた。富野康日己 著『腎臓病 Q&A 50』である。

 

多くの人に読んでもらいたいものではない。できれば病気に悩む人の少なからんことを願うわけでもある。たくさん売れてうれしい話ではないのだ。でも……だからこそ、病気に関わる出版は、デジタルによって私たちが保持していくべきとても大きな課題ではないかと思う。一例として見ていただきたい。そこには著者である医師の診察を直接受けるための方法も、情報として明記されている。

 

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