著作権保護期間の延長……ニュースが流れています。ここに青空文庫の富田倫生さんがいたら。亡き夫を思い発した富田晶子さんの言葉を掲載させていただきます。
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TPPの「大筋合意」により、著作権保護期間の延長が国の既定方針となってしまいましたが、最終的に改正法が適用されるまでは、まだ数多くのプロセスを経なければなりません。最後の姿がどうなるかに、私たちは影響力を行使することができると考えます。これからどこまで粘って知的財産の公正利用を認めさせることができるか。保護期間の延長による損失は大きいけれど、これを機会に英知を集め、活動の輪を広げて深めることができれば、今まで視野になかった新しい可能性が見えてくるのではないでしょうか。
著作権保護期間延長の可能性が公になった2004年以来、夫は一貫して反対の声を上げ続け、それがどれだけ文化の多様性と知の巡りによる創造性を損なうものであるかを、文字通り体を張って訴えてきました。亡くなるまで、揺るぎの無い信念で、時には病床で声明文を作成していました。2006年夏の危篤状態を乗り越え、2008年に海外での移植で新しい命をいただいて生き延びた5年間、あきれるほどに立派に戦ってきました。
「本の未来基金」の運営委員のみなさんは、こうして筋をとおして亡くなった富田倫生の信念と行動に共感し敬意を表して基金を立ち上げてくれました。家族としては、青空文庫の運営も著作権保護期間反対運動も、夫の病気の進行と重なります。一時は辛い思い出ばかりが押し寄せていたのですが、3回忌をきっかけに気持ちを変えて前向きに対応する決意をしました。そうすることで夫を身近に感じられ、喜んでくれる顔がみえるからです。
夫が抱いた「永久機関の夢を見る青空文庫」の夢の実現に向け、あらゆる可能性を捉えて話し合い、行動を起こし、成果を分かち合っていけるよう、これからもみなさまのご支援をお願いいたします。
富田晶子「本の未来基金」へ寄せた言葉より
〈青空文庫にて集めた著作権保護期間延長反対の署名を前に 富田倫生氏〉
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