コラム
2021年8月8日
装丁の平野甲賀さんがこの世を去って早くも4ヶ月が経過します。こうなってしまって「甲賀文字」を改めて見つめています。壁に掛かったこの文字。なんとも言えない滲み出る愛情が伝わり心を揺すぶらないでしょうか。
平野甲賀の俳句の文字で思い出したのですが、片岡義男が何かのついでとばかりひょいと口ずさむ俳句――
〝あいなめを わけあう箸の 白い指〟
次なんかまだまだ暑い今日この頃じゃピンと来ないかもしれないが、一筋縄のコーヒー通でもなきゃ出ない言葉でしょう。
〝コーヒーの ひとときがある 冬西陽〟
何でもありです。すべてを溶かして飲み込んでいく。それが片岡義男です。たのしい。この一言にすべてがかかっている。そうじゃなきゃすべてが虚しい。夏もゆく、秋たつ今日をお大事にお過ごしください。
《『コーヒーに俳句が溶けていく』より引用させていただきました》