アクセシビリティを高めるための制作ガイドライン

アクセシビリティとは

情報化社会において、情報へのアクセスは基本的人権です。本を読むという権利もまた全ての人に保証されています。その「読む権利が保証される社会」に向けて、世の中が動き始めています。

とりわけ2019年に施行された「読書バリアフリー法」(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律)以降、障害者の読書環境の整備は各業界で取り組まれています。

ボイジャーもまた「本と読者をデジタルでつなぐ」を合言葉に、今世紀はじめ(2001年)から、視覚障害者等への読書環境の整備を継続してきました。


読書バリアフリー法では単なる視覚障害者だけでなく、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍について、視覚による表現の認識が困難な者を、「視覚障害者等」と位置づけています。

そうした視覚障害者等の方々にとって、紙の本は、情報にアクセスできないただの紙の束でしかありません。

電子書籍は、視覚障害者等が本にアクセスできる福音のはずでした。

しかし電子書籍の作り方によっては、音声読み上げもできない、文字サイズの変更や目次からのアクセスもできないというように、アクセスを拒絶する本になってしまいます。


作り手として、是非ともアクセシビリティに配慮した電子書籍の作り方を実践してほしいと願っています。

「合理的な配慮」について

個人作家の場合でも、出版社の場合でも、電子書籍の制作において、アクセシビリティを高めるために完璧を期そうとして、労力(コスト)がかかりすぎ、出版ペースが遅くなる、収益が見込めないから出版点数を減らす、となっては本末転倒です。法律ではそこまでを求めておりません。これを「合理的配慮」といいます。できることをできる範囲で実行することが重要です。

テキストで表現可能な本を画像にしない

画像は読み上げも検索もできません!


電子書籍(EPUB)には、大きく分けて、

  • リフロー形式
  • 固定レイアウト形式

の2種類があります。

Romancerの「NRエディター」で作成する場合はリフロー形式になります。

「原稿アップロード」で作成する場合は、MS Wordの原稿(docx形式)では、リフロー形式、連番画像やPDFでは固定レイアウト形式になります。

固定レイアウト形式は音声読み上げ機能を使うことができないため、視覚障害者等はその本を利用することが全くできません。

もちろん、コミック、画集、写真集等、あるいは複雑なレイアウトのためリフロー形式では不可能な本も存在します。その場合には、固定レイアウト形式で作っても問題ありません。

しかし、そうでない場合、リフロー形式で作ることをおすすめします。


参考情報として、Kindle Direct Publishing(KDP)、Apple Books(iBooks)でも、テキスト(リフロー)で表現可能な本を固定レイアウトで制作した場合、受け付けてもらえない事例は少なくありません。

テキストに関する注意

意味の通じないテキストを避ける

いわゆる「ギャル文字」は読み上げも検索もできません!

見た目は文字っぽくても全然別の文字、例えば、半角の「レ」と「﹅」を組み合わせて平仮名の「い(レヽ)」、半角の「ナ」と「ょ」を組み合わせて「な(ナょ)」を表現するような文字は、検索や音声読み上げの妨げになりますので使用を避けます。

改行やスペースによるレイアウトを避ける

改行やスペースを使ったレイアウトは、検索や音声読み上げの妨げになるので使用を避けます。

例えば「目次」という熟語の間隔を空けるために全角スペースを入れて「目 次」のように表記してしまうすると、「め つぎ」と読み上げられてしまいます。

ルビには読みを入れる

難読語、固有名詞など、読み方が難しい言葉にはふりがなとしてルビをつけます。

その際、音声読み上げを考慮して、読み方をそのまま入れるようにしてください。

以下のようなルビの使い方はできるだけ避けてください。

  • 印刷本の場合には、促音を使わないケース(例 「書籍」に対して「しよせき」とルビをつける)もありますが、このようなルビは、そのまま促音を使わない読み方をされてしまいますので、読み方の通り(例 「書籍」に対して「しょせき」とルビをつける)にしてください。
  • ルビを使って傍点(﹅)をつけないでください。

画像に関する注意

代替テキスト

視覚障害者は、画面を目で見る代わりに、音声読み上げで内容を把握します。画像にした箇所が重要な内容を含んでいる場合に、その内容が読み飛ばされてしまったら意味が通じなくなってしまいます。そのような場合には、適切に画像に対して代替テキストを設定する必要があります。

詳しくは「画像の代替テキストについて」をご覧ください。

色とコントラスト

画像に重要な情報が含まれている際に、弱視者がみても何が書いてあるか判定できるよう、色やコントラストに配慮しましょう。

背景色と文字色のコントラストを確認するツールはいくつかあります。画像作成時にチェックしてみてください。


コントラスト確認ツールの例

見出しと目次に関する注意

見出し

見出しは、その章の内容をわかりやすく表現するものにします。

数字や番号だけの見出しはできるだけ避けてください。

見出しと目次

「原稿アップロード」の場合、MS Wordの原稿に見出しを適切に設定したら、Romancerでの変換時に「目次ページ 自動生成する」をチェックすると、見出しを反映した最適な目次が自動生成できます。「目 次」のように全角スペースで間隔を空けなくても適切に間隔が空きます。

リンクに関する注意

どこにとばされるかわからないリンクは不安になります!

外部リンク(URL)の場合も、書籍内リンクの場合も、リンクは、その目的をわかりやすくすることが重要です。そのリンクの前の文脈、あるいはリンクされている文字列から、リンク先が何であるかわかるようにします。