作品紹介
奥羽への出陣で十日夜の神事ができなくなった広沢の村人は、一日繰り上げる「九日夜」を着想。神に詫びつつ餅をついて祈りを込め男たちを送り出すと、全員が無事帰還を果たし、その風習が語り継がれることとなった。
作者からの言葉
本作で描きたかったのは、歴史の表舞台に立つ英雄たちの武功ではなく、その足元で懸命に時代を生き抜いた名もなき百姓たちの「逞しさ」と「情の深さ」です。
戦という理不尽な権力の前では抗う術を持たない無力な人々が、大切にしてきた神仏への信仰を諦めるのではなく、「一日早く神様に詫びて一緒に餅を食おう」という柔軟でユーモラスな知恵を生み出します。神を恐れ敬いながらもどこか身近な家族のように信じる、日本人の素朴で温かい信仰心を描きました。
不安や悲しみを押し殺し、ただ「腹いっぱい食わせて生きて帰す」という祈りを込めて搗かれた餅――その温もりが、厳しい寒さと過酷な戦場を生き抜く命の支えになったという民話的な温かさを感じ取っていただければ幸いです。
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