作品紹介
根本山の天狗が麓の酒屋で一升徳利に三升の酒を注がせ、江戸へ飛翔した。安政の大火で井伊家屋敷を救った黒装束の男が「下野の黒幣」と名乗ったことから、井伊直弼は根本神社を祈願所と定めて篤く信仰した。
作者からの言葉
本作は、清水義男氏による郷土伝承記録『黒幣の天狗 梅田町五丁目』をもとに、作家・夢枕獏氏特有の文体で書き替えた短編小説です。原典が持つ「深山の霊験」「真夜中の酒買い」「安政の大火における奇跡」、そして「後の桜田門外の変へと連なる井伊直弼の因果」という陰影に満ちた要素を、独特のリズム感ある短文、妖気漂う闇の質感、そして疾走感あふれる伝奇アクションとして再構築しています。素朴な民話が持つ滋味を活かしつつ、神仏と人の運命が交錯する重厚な伝奇の世界へと昇華させました。
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