作品紹介
上州の百姓・山田奴は、京の宮中で白滝姫と和歌で渡り合い心を通わせる。姫は上州へ下り、寒風と悪臭にまみれた過酷な労働の中で機織りの技を村人に伝え、自らの命を使い果たして泥臭くも力強く生き抜いた。
作者からの言葉
本作は、群馬県桐生市に伝わる「白滝姫伝説」という民話を、坂口安吾の文学的文体・思想(『堕落論』『日本文化私観』などに見られるリアリズムと生の肯定)を色濃く反映させて描き替えた短編小説です。 従来の伝説や郷土史では、身分違いの純愛物語や機織りの神様をもたらした優雅な美談として語られがちですが、本作ではそうした「綺麗に糊付けされた虚飾」を剥ぎ取っています。宮廷の退屈と形式美に窒息しかけていた姫と、泥濘から立ち上がった無骨な百姓の男が、言葉(和歌)の白兵戦を通じて互いの実存をぶつけ合い、やがて過酷な自然と血の通った肉体労働のただ中へ身を投じていく姿を描きました。
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