天に昇りそこねた河童 みどり市大間々町下神

天に昇りそこねた河童 みどり市大間々町下神

タイトル

天に昇りそこねた河童 みどり市大間々町下神

ジャンル

書籍/その他

著者

清水義男

公開日

2026年07月22日

更新日

2026年07月22日

作品紹介

天に昇りそこねた河童 (下神梅)
天に昇るよりも川の中がいいと悟る

観音寺の東側を流れる渡良瀬川には、いつもたくさんの魚が泳いでいた。時々一尺(およそ30㎝)もあるでっかいアユが、水しぶきを上げて跳びはねた。でも、観音寺の裏は何丈もある高い崖で、観音寺から流れをジーッと見ていると、今にも流れに呑み込まれそうな感じになってくる。しかも渡良瀬川の流れが急なので、誰も近づくことができなかった。

寺の真下の岩には、細長い渕ができていて、そこには河童と龍が棲みついていた。龍は、時々、ザザザー ザザザーッと水面に顔を出すと、勇ましく天へと昇っていった。カッパは、そんな龍の姿を渕の中からいつも羨ましそうに見送っていた。

「あーあ、俺もなんとかして天へ昇ってみてぇなあ。どうしたら龍のように昇れるんかなあ。」
河童は、昇天する龍を見ては、いつもいつも、そう独り言を言っていた。

「そうだ。龍に教わればいいんだ。きっと、うまく天へ昇れるようになるだろう。」

河童は、そう思いつくと、それからは毎日毎日ご馳走を作って龍に食べさせては、龍のご機嫌をとった。そして時期を見計らって、
「龍さんよ。一度でいいから俺を天へ連れてってくんないかい。」
「どうしたら、天に昇れるんか、コツを俺に教えておくれよ。」
と、熱心に頼みこんだ。

Wait、龍はなんにも言わずに、河童が持ってくるご馳走を美味そうにパクパク食べているだけだった。それでも河童は諦めないで、ご馳走を作っては龍のところへ運び続けた。

ある日のこと、河童の持ってきたご馳走を食べながら龍がようやく口をきいた。
「オレが天に昇るときはな、必ずこの辺りが暗くなって、サーッと霧が巻いてくる。オレは、その霧にのっかって天に昇るんだ。いいか。その時にお前はオレのしっぽにしっかりつかまれ。そうすれば、天に昇らせてやるぞ。」

河童は、龍の言ったことをしっかりと頭に叩き込んで、天に昇れる日を待った。

やがて龍が言ったような空が暗くなる日がやってきた。そしてサーッと辺りに霧が巻いてきた。そんな暗闇の中で、龍の目だけがピカッ、ピカッと光っていた。

「ようし、いまだ。」

河童は、夢中になって龍のしっぽに飛び付いて、しっぽを口でしっかりくわえた。すると龍が天に昇り始めた。カーッと口から真っ赤な火を吐いて、真っ黒な雲を突き破りながらグングン、グングンと上昇していった。龍の吐く真っ赤な火が、稲妻となって天を走った。

河童は、
「振り落とされるんじゃないか。」
かと、震えながら必死になって龍のしっぽにしがみついた。

ピカーッ ザザザザーッ
ピカーッ ザザザザーッ

龍は、なおもズンズン昇天していく。そのうち、少ぅし龍のスピードが鈍ったので、しっぽにしがみついていた河童は「もう天についたのかな。」と下を見た。

そしたら、渕の近くの観音寺は全然見えないし、棲んでいる渕もわからない。龍は、それほど高く高く昇ってきていたのだ。

河童はたまげてしまった。そして目がクラクラッとしたものだから、
「ああーっ。」
と、思わず大声を上げてしまった。とたんに、龍のしっぽから口がはなれて、真っ逆さまに地上へと転落してしまった。それでも、運よく自分の棲んでいた渡良瀬川の渕の中へドッボーン。お陰で、大事な頭の皿を割ることなく助かることができた。

それからの河童は、
「俺は、やっぱり水の中がいい。天に昇っても俺の棲むところはなさそうだ。俺はこの渕に棲むのが一番いいんだ。」
と、天に昇ることを諦めて、観音寺の下の渕で長ァく楽しく暮らしていたという。

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【補足・解説】
▼観音寺は廃寺となって久しいが、平成になって観音堂を再建させている。観音堂は、下神梅地区の鏑木理容所の前を渡良瀬渓谷鐵道の線路方面に向かう。そして、その線路を越え、すぐに左折して急な階段を登った先に在る。境内には墓地があり、観音堂再建記念碑も見られる。
▼民話の息づく渕は、観音堂の在る岩山の東側の直下に現存するが、観音堂からは行くことができない。渡良瀬川の左岸に遊歩道があるので、そこの川原から見ることになる。しかし、渕に近づくことは不可能である。

作者からの言葉

大間々町はみどり市だが 桐生市近辺ということで

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