タイトル
子どもの教育と大人の教育ジャンル
書籍/教育公開日
2017年10月08日更新日
2018年11月24日作品紹介
この文章は、去る二〇一五年に講演し、その後雑誌「ハーストーリー」(Her Story)に掲載された講演草稿をもとに、同年三月にブログで紹介したものです。昨今の日本のゆゆしき問題の一つ、と言うより、あらゆる社会問題のほぼすべての根本問題は、教育現場(家庭、学校、職場等)のモラルの無さに起因しています。人間にとって最も大事なこと、それは理性的でバランスの取れた思考が出来ること、相手の立場から物事を判断し、思いやりと寛容の心を持つことです。しかし実情は、日本のみならず世界的(特に先進国)に思いやりと寛容の心が失われて行っています。科学技術の高度な発展とともに大変便利な世の中になりました(そのこと自体は決して悪いことではありません!)が、それと同時に人間の心は急速度にすさんで行っています。
なぜでしょうか? これだけ便利で豊かな世の中になったというのに、生活に満足出来ない人の数も増え、世の中に恨みや悪意を持つ人も増えているように思えます。これは、便利さが自分を良くしてくれると思い込む、一種の「甘え」から来ています。昔、何も満足に無い時代は「無いことに甘んじる」、つまり我慢することが出来ていました。現在は、皮肉なことに、何でもあるがゆえにその便利さへの要求にキリが無くなっているのではないでしょうか? 言い換えれば「贅沢な甘えん坊」が増えて、その甘えん坊たちが「あれもしてくれない、これもしてくれない、何もしてくれない!」と駄々をこねているような世界が現代だと言えるでしょう。
最近「流行(はや)り」の不倫や離婚もそうです。自分は愛されるために自分のありのままの姿を変えようと努力せずにひたすら相手から愛されることばかりを求め、「悪いと思っていながら」平気で自分のパートナーを裏切る。よく「パートナーの暴力に耐えられずに…」なんて言っている人がいますが、それがどうして「不倫」に直結してしまうのでしょうか? 満たされないのは自分だけではない、パートナーもささくれだった自分の心を自分でコントロール出来ないほど苦しめられているということが解らないでしょうか? …現代の人間は、おしなべて「自分勝手」です。自分のことしか頭に入っていません。いや、自分のことさえ自分でそう思い込んでいるだけで、実際には自分の実像すら把握出来ていないのが本当のところでしょう。
私はそういった問題の根に精神教育の不足が横たわっていると考え、それをこの文章で表しました。同感の方、異論のある方、さまざまにいらっしゃるでしょうが、私はこの本を通して読者の皆さんとともに、日本の、いや大きくは世界の「現代人の問題」を考えて行きたいと思います。さらに付け加えると、特に家庭における「対話」の実践の重要性を改めて考え直す契機にしていただけたら幸甚です。(あとがき)
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