タイトル
人間と文化ジャンル
書籍/人文科学公開日
2017年09月27日更新日
2018年03月21日作品紹介
オランダを、と言うより二十世紀のヨーロッパを代表する歴史家、文化哲学者であるヨハン・ハウジンガ(1872~1945)は、一九三〇年代から本格的に現代社会に巣くう精神的問題を取り上げ、それを鋭く指摘し、どうやってこれらを乗り越えるかについて考察し始めた。その渦中において生み出された数々のエッセイ、講演草稿、新聞への投稿などのうち、最も影響力を持ち、最も説得力のあったものが一九三五年に出版された『あしたの影の中で』というエッセイである。ハウジンガはこの本で取り上げた諸問題をオランダ語で表現したが、彼はひとりオランダ人にだけでなく、ヨーロッパ中のさまざまな国民に向けて同じ課題を投げかけ続けた。それらのうちから本書では二つのエッセイを取り上げた。これはどちらももともとは本の形で出版するために書かれたものではない。『人間と文化』は(ハウジンガ本人が前書きで書いているように)もともとオーストリア文化連邦協会の招きで行われるはずだった連続講義の原稿が、その後スウェーデンのストックホルムの出版社から叢書の形で出版されたものである。従って原文はドイツ語である。『文化回復のための諸条件』はイギリスの「ザ・フォートナイトリー・レヴュー」(隔週雑誌)誌に寄稿された文章である。この二つの文章に表れている通り、ハウジンガが主張する内容は首尾一貫しているし、その主張は明快である。書かれてから既に七十年以上経っているけれども、それは現代に生きる我々にも「現在の声」として響いて来るに違いない。
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