タイトル
天と風と星と詩ジャンル
書籍/海外小説・海外文学公開日
2017年09月24日更新日
2019年07月07日作品紹介
尹東柱(1917~1945)の後期詩(1940年以降の作品)の内容を検討すると、そこには二つの大きな意味を看取する事が出来る。ひとつは、日本統治下であえぐ祖国の姿と失われて行く祖国の文化に対する愛惜の情といった、従来の尹東柱論で繰り返し述べられ、強調されて来た民族主義的側面である。しかし、一部の作品はその面からの解釈が可能なのは事実だが、彼の後期詩全体にその解釈が当てはまるとは決して言えないのである。そこでさらにもう一つの側面、「原罪観」「救済観」「終末観」の三つの側面から、彼の作品の解読を進めることとする。なぜならば、民族主義的観点からのアプローチが不充分なものを含んでいるのに対し、尹東柱の後期詩は全て「原罪観」「救済観」「終末観」のどれか、あるいはその全てを内包しているからである。この訳詩集はこのような観点から私の主張するいわゆる「後期詩」に焦点を当てた抄訳である。もともと去る一九九八年に詩画工房から本として出版したものだが絶版になって久しく、また仮名遣いが尹東柱当時を意識した旧式であったので、今回それをかなり改めた。ただ作品の配列は私の信じた通りに「原罪観」「救済観」「終末観」を踏まえた配列にしてある(長編作品はその限りではない)。前期の習作をあえてカットすることで尹東柱が現代を生きる我々に本当に伝えたかった意図が明確になると思ったし、そうすることが彼の心にもそぐう行為であると信じたからである。
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