信頼できるスポンサーを探せ! ネットアルゴリズムの支配から抜け出すために

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「チームヒューマン」はスポンサーEveryone’s Earth社と読者の月5ドル〜50ドルの定期購読費用で運営されている


『デジタル生存競争』の著者、ダグラス・ラシュコフが運営しているポッドキャストにはスポンサーが付いています。

D・ラシュコフはインターネットを支配しているネット億万長者の姿勢を厳しく批判しているテック評論家として有名です。その、D・ラシュコフが運営するポッドキャスト「チームヒューマン」(Team Human)にスポンサーが付いている? 著作を知る人ならば頭が疑問符で埋めつくされるはずです。

彼がどんな本を書いているのか、少しだけ紹介しましょう。例えば著作『デジタル生存競争』では、ネット長者が火星への移住や自分用の核シェルターを準備していることを笑い飛ばしました。2023年6月刊行の日本語版は2万5千部売れています。2025年4月刊行のドイツ語版は権威あるドイツ経済紙ハンデルスブラット(Handlesblatt)が主催するドイツ・ビジネス書賞のロングリストに選出されました。

別の著作『チームヒューマン』では、「我が家の近くにあるピザ店」という検索をした場合を例にあげて、ユーザーが無意識のうちにeコマース等にとって望ましい行動を導くように促す技術「パースエイシブテクノロジー」の危険を暴いています。今のネットは、パースエイシブデザインだから、検索結果は現実を反映しているわけではなく、自分が求めた結果が表示されているはずだと思い込まされているだけだ、と言うのです。

「チームヒューマン」にアクセスしてみます。画面の一番上、赤色の四角で囲まれた[support]ボタン、ここから読者は定期購読を申し込むことができます。

エピソードにアクセスしてみます。すると画面の下部分に数行のスポンサーのクレジットがあります。

 

 Team Human is proudly sponsored by Everyone’s Earth.
 Use the code “rush10” to receive 10% off on Cobi Dryer Sheets
 Learn more about Everyone’s Earth: https://everyonesearth.com/

 

インターネット広告のリアルタイムビッティング技術(RTB)では、ユーザーのインプレッションごとにアルゴリズムが動いています。機械が人間に代わって0.1秒単位のオークション方式でスポンサーを探しているのです。だから突然、生命保険や健康食品の広告が出てくるのです。D・ラシュコフはそんな非人間的なことはしません。それがD・ラシュコフです。

 

D・ラシュコフにどうやってスポンサーを見つけたのかと聞きました。

私は最初の広告でその件について放送で話しました。私はニューヨーク市のビデオスタジオでポッドキャストを制作しています。

Everyone’s Earthという会社の代表者は、同じスタジオで彼の再生製品「コビードライヤーシート(Cobi Dryer Sheets)」などに関する動画を撮影していました。彼は私の仕事の大ファンで、私の番組のスポンサーになっていいか尋ねてきました。私は「もちろん」と答えました。彼は唯一のスポンサーになりたいと言い、私が彼の活動について自分で広告を作成してほしいと要望しました。私は彼に何をしているのか尋ねました。彼は、多くの人々が使用するプラスチック製品に代わる生分解性製品を製造していると説明しました。私はそれが素晴らしいと考えました。彼と彼のミッションを信頼しています。

そのため、彼はエピソードごとに定額料金を支払っています。私は2つの広告を読み上げたり即興で作成したりし、会社の広告を1つ流します。

私は代理店や入札などを使いません。月末に、録音した番組の数を記載した請求書を彼に送ります。通常は4~5番組です。その後、彼は私の銀行口座に電子送金で支払いを送金します。

 

Life is Not a Simulation: It's Magic

ポッドキャストでコビードライヤーシートの使い心地、スポンサーEveryone’s Earth社創業者トム・カリッシュ(Tom Kallish)との出会いを語るD・ラシュコフ

Life is Not a Simulation: It’s Magic

 

このポッドキャストでD・ラシュコフは、コビードライヤーシートは洗濯物をフワフワに仕上げるための乾燥機用の商品で、創業者トム・カリッシュとその製品は、自分で紹介する価値があったと信頼したからこそ、スポンサーになってもらったと話しています。みなさんもどうぞゆっくりご視聴ください。

最後に「パースエイシブテクノロジー」という言葉が気になった方のために『チームヒューマン』から引用します。

 

 パースエイシブテクノロジーの戦略は、デジタル環境が正しく世界を再現しているということをユーザーが信じるかどうかにかかっています。ネットの画面が現実世界を見るための窓であると信じると、画面に並んだ商品の画像を受け入れやすくなります。しかし、提示されていない選択肢はどうなるのでしょうか。それは本当に存在しないのでしょうか。
「我が家の近くにあるピザ店」という単純な検索に対して、掲載料を払った店だけがリストに表示されて、掲載料を払っていない店は表示されないのかもしれません。パースエイシブデザインでは、それぞれの条件でいくつかの選択肢を示しますが、これは、ユーザーが本当に自主性を発揮してネットの限界から飛び出してしまわずに、どのように店を選ぶのか、そのパターンをユーザーに教え込むためです。ゲームデザイナーが全てのプレーヤーに同じ物語を進ませるのと同じです。このとき私たちは、最初から最後まで自分自身で選んだと思っていますが、このような選択は本物ではありません。全ての選択肢は、デザイナーがあらかじめ用意した結果に必ずたどり着くからです。画面そのものは中立的に見えるので、私たちは提示された選択肢をそのとおりに受け取っています。しかしその選択肢は、そもそも選択肢ではなくて、私たちに制約を受け入れさせるための新しい手段なのです。


『チームヒューマン』
第5章 デジタルメディア環境——モノ化される人間
紙版 p86

 

 

思考を揺さぶる、ラシュコフの名著たち