タイトル
エキスパンドブックジャンル
書籍/その他公開日
2015年12月06日更新日
2015年12月08日作品紹介
エキスパンドブック(正式にはExpanded Book)は、ボイジャーの初めての電子出版ツールとして1992年に米国で導入が始まった。その後、日本でもこのツールの利用者が増えていった。このRomancer出版は1995年に日本版のユーザーマニュアル冒頭に付された「まえがき」であり、ある種の"電子出版宣言"とも言えるものではなかったかと思う。20年後の2015年、これを読み直し、変化したものと、変化せざるものの対比を読み取っていただきたい。
パワーブックをスマートフォンに、エキスパンドブックをロマンサーに置き換えれば、色褪せない文章。
少し違うのは、パソコン、スマートフォン、タブレットの低価格化により、作るのはパソコン、読むのはスマホやタブレットになってるってことかな。
この表紙のアルチンボルドの絵にPowerBook 100が埋め込まれて描かれています。憧れのマシンでした。
パソコンが生産機としての属性を捨てきれない中、真のパーソナルデバイスとなったのが、スマホとタブレットといえるかもしれない。Cモッド氏が言う「グーテンベルク以来の本の大革命」とはこのことか。(一方、ジョブスが目指したプロシューマ向けデバイスは、iPad Proで実現するのかも)
また、20年前にスクロール(巻物)への言及があるのが印象的。現在ウェブ上で一部スクロールへの先祖返りがみられるが、電子本のページネーションやパッケージメディアの意味を再度考えたい。
このまえがきは熱い思いで読んだものです。何か信頼できる大きな意欲が、遥か彼方に向かっている―そんな印象でした。その後を追って、もうはや二十年。本のフォーマットは変わってしまいましたが、個人の表現が自由な発信を望んでやまないのは、今もこのまえがき通りだと思います。本の未来はまだまだ先、さらなる歩みを続けていかねばならないでしょうね。
Romancerの説明を書いていて、昔とまるで変わっていない(進歩のない)現実に気づかされる思いがしました。なーんだ、変わってないじゃん。一方で、突き破ることのできない壁に阻まれている現実も意識します。どこまでやっていけることやら……