タイトル
遠雷ジャンル
書籍/その他公開日
2021年03月31日更新日
2022年08月17日作品紹介
「そして生家に連なる村道に迫り出した、崖の上のお化け石。篠突く雨に打たれたあの奇岩は、あおぐろく稠密した雨雲に向かって手を伸べながら、今もなお物思わしげに、何か聞き分かぬ祈願を凝らしているのだった。
そう。落雷に撃たれる恐怖ではなく、ひょっとしたら雷には、けっして撃たれないかもしれない恐怖に蒼褪めながら……。」
東京の場末の歓楽街に春を売るフィリピンの女たち。その中の一人にマリアはいた。
女たちを束ねる「私」と、マリアとの間の秘めた思い……。
遠い故郷に哮る雷鳴の記憶と、青褪めた都会の風景に彩られながら、そこには最も起きてはならなかったこと、「何も起きない」ということが起き、私の心は死んだのだ……。
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