愛を表すほうの

愛を表すほうの

タイトル

愛を表すほうの

ジャンル

書籍/小説・文学

著者

池亀大輔

公開日

2020年01月12日

更新日

2024年02月07日

作品紹介

━名作の誉れ高いジブリアニメ、天空の城のラピュタのおしまいで、ひとまず平穏な日常に戻ったヒロインに、平穏な日常の営みとして乳を搾られ、穏やかに寄りそう牛たちも、魔女の宅急便の、こちらは始めのほうで、それがじつはどこかへ運ばれていく途中の、牛たちのために用意されたものなのだとも知らず、汽車に積まれていた藁に埋もれて夜通し眠ったヒロインの、足先をなめて観客の笑いを誘う牛たちも、みんな遅かれ早かれいつか必ずその身に対して始められる手作業の、手順に沿った速度で、殺されるともなく殺されながら、解体されなければならないものとして誕生させられ、愛を引きさかれ、踏みにじられ、痛めつけられてそこにいる牛たちだからといって、それが主題というわけのものでもなければ、せっかくの甘美な物語をむげにしてまで心をさしださずとも、あたえられるがまま、ただただ心地よいばかりの余韻に浸りつつ、心あたたまる名作映画を見終えるかのようにして、せいぜい心安らかに、生きおえてしまえばいい。

第124回文學界新人賞第3次予選通過作品を改題した表題作とプロローグにあたる短文を収載

作者からの言葉

殺したくなければ、殺したくないと、言っていいんだよ、たとえ動物の血肉を口にしなければ死んでしまうとしても、生まれることを自分で選んで生まれたわけでもないのに、殺したくないものを殺してまで生きたいとは思わないと、勝手に誕生させて、生きることを、殺すことをしいるなと、言っていいんだよ

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