コラム
2022年3月20日
3月22日、平野甲賀さんが亡くなって一年が経った。お顔を想う。口の周り、白と黒が混じった髭、でてくる言葉の柔らかさ、ありありと目に浮かぶ。小豆島でお会いしたのが直接言葉を交わした最後だったか……いや銀座のGGGで何かのイベントでだったかもしれない。あの日、夕暮れからの大雪で電車も止まると急いで家路についてしまった。何でとことん付き合わなかった。悔やまれてならない。
祐天寺で行われた展覧会では書店のスペースに平野甲賀さんと小島武さんの作品が並べられていた。
私たちのためにいくつもの文字を書いてくれた。そのひとつ一つにたくさんの思い出が残っている。書き殴った私たちの能書きも、白い冊子となり、平野甲賀の題字がおさまると立派なメッセージとなった。世の中を走った。ゼッケンを胸にトップをいくマラソンランナーのように。
販売されていたポストカードの中から、私は躊躇なくこの一枚をとった。末代までも平野甲賀を忘れさせてはならないと。
萩野正昭 2022.3.22