7月1日 Romancerは満6年を経て、新しい段階へ

思い切って荒海に船を出す

Romancerを初めて公開したのは2014年7月1日でした。


その翌年に行われた「第19回国際電子出版EXPO(東京国際ブックフェア)」で、Romancerを改めて世に送り出しました。今からちょうど5年前のこの日を「正式なサービス開始日」としています。


この発表の場に向けて、『私自身のための出版』という小冊子を作りました。作り方の説明、そして電子出版の心得を必死で伝えようとしました。


その中でサンプルとして作られた作品、『トタン屋根の風景(リフロー版)』(著・加藤忠一)にもその思いが反映されています。


『トタン屋根の風景(リフロー版)』

加藤忠一


講演という形でも「どうすれば作れるのか」を説明しました。


ボイジャーの出版サービス
商業出版制作のためのRomancer講座


更に、Romancerを本格的に制作ツールとして活用した新たなプロジェクト「片岡義男全著作電子化計画」を発表しました。個人の作家へ向けた「制作委託」と「販売委託」のサービスも同時に開始しています。


実際のところ、「Wordの原稿をアップロードしたらEPUBの出来上がり」と口で言うほど簡単ではなく、ある程度は出版のルールを知っておく必要がありました。制作委託は「書くことに集中したい」という声に応えるために生まれました。

同時に開始した販売委託は、個人ではアプローチできない主要な書店も含まれた取次サービスです。


販売委託の最初の作品群はこちらです。


『真実の部屋』

初瀬川智則


『消えた町』

田中文夫


販売委託を通して作家とやり取りする中で、販売する理由が「本を売って儲けたい」よりも、「販売することで多くの人に読んでもらい、後世に残したい」という思いの方が強いことがわかりました。


徐々に「残す」ことの重要さに気づいていきました。

複数の書店で販売することで、後世に残せる可能性は高くなります。それでも私企業が永久的な保存を担保することはできません。


そこでボイジャーは2020年2月、国立国会図書館に働きかけ、片岡義男作品を国立国会図書館デジタルコレクションに提供することで電子納本を開始しました。

今後、理想書店の作品も同様にデジタルコレクションへの提供を予定しています。


プレスリリース
作家・片岡義男小説(449作品)、国立国会図書館の電子閲覧公開へ


そしてNew Romancerへ

みなさまのご利用が少しずつ実を結び、Romancer登録ユーザーは10,000人を超えました。

本日時点での数字を明らかにいたします。

  • 登録ユーザー数:10,457人
  • 公開作品数:2,455タイトル
  • 制作された作品数:74,111タイトル
  • 理想書店での取扱作品数:303タイトル(Romancer作品)

これまで私たちは多くの方に電子出版してもらうため、さまざまな質問に答えてきました。ですが振り返ってみると、その内容はRomancerそのものではなく、Wordに関するものがほとんどでした。


当初は、みんなが使えるわかりやすいツールとしてWordを選びました。それが今では利用する上での壁になっていたのです。


この壁を取り払うにはどうすればいいだろうか? わかりやすいマニュアルが必要ではないか、セミナーを定期的に開いて直接教えるのはどうか、動画でレクチャーすればいいのではないか…。Romancerチームで日々議論を重ね、そして結論を出しました。


理想的なツールを自分たちで作ることにしたのです。


現在、新しいRomancerを開発しています。まだプロトタイプの状態ですが、いくつかの作品がここから誕生しています。

その一部をご紹介しましょう。


『学校図書館の存在意義とデジタルトランスフォーメーション(DX)』

有山裕美子


『身捨つる祖国はありやニューメディア』

萩野正昭


そして最後にこんな事例を紹介いたします。5年前、Romancerを開発する私たち自身が開発者としてだけでなく、作家として現実に向き合うべきだと考えて作った作品です。これまでの間にご覧になった方もいらっしゃることでしょう。今日の『るいせんぶんこ』は、新しいRomancerによって試作されています。


『るいせんぶんこ』

萩野正昭


決して特別なレイアウトや装飾がされているわけではありません。本当に必要なものだけを取り入れています。余計なことに悩まず、作家は作品と向き合えるようになる。そんな姿を目指しています。


この新しいRomancerは近いうちに何らかの形でご覧いただくことになります。

ご期待ください!