第9ネーム大賞最終選考!〈アイディア6原則〉の視点で読んでみた

本日、マンガ on ウェブ主催の「第9回ネーム大賞」の最終結果が発表になりました! ネームとはマンガの下書き・絵コンテにあたるもので、佐藤秀峰先生をはじめとする、現役バリバリの漫画家・編集者のみなさんが作品を選考。今年の応募数は341件で、全作品の講評や審査の様子がWeb上に公開されています。貴重な講評を作品制作に活かせるというのが何とも嬉しい賞なのです。

 

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1次審査の様子をRomancer版でどうぞ

全作品の講評はこちら

*マンガ on ウェブサイトへリンクします

 

そして今回、ボイジャーも協賛企業として参加。「ボイジャー特別賞」の選考という役目をいただきました。しかし、文字もの作品が多いRomancer。マンガに疎い我々がどのように決めればよいのか……いざ、向かい合ってみると、頭を悩ませるばかり……判断の基準をどこに据えるかということで、こちらの本を参考にさせていただきました。

 

「アイディアのちから」日経BP社 (2008/11/13)

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人の記憶に残るメッセージには法則があり、それらを6つの原則で紹介しています。

 

アイディア6原則

  1. 単純明快である (Simple)
  2. 意外性がある (Unexpected)
  3. 具体的である (Concrete)
  4. 信頼性がある (Credible)
  5. 感情に訴える (Emotional)
  6. 物語性 (Story)

 

画の良し悪しや技術的なコマの見せ方を判断できる技量がない…それならば、思い切ってこの観点で「ボイジャー特別賞」を決めよう! と考えました。もう少し具体的な選考基準に言い換えてみます。

 

アイディア6原則〈ネーム大賞選考版〉

  1. 単純明快 ストーリーを他人に説明しやすいか?
  2. 意外性 予想外/常識破り/ハッとする展開があるか?
  3. 具体的 舞台/人物の設定が作り込まれているか?
  4. 信頼性 ストーリーに説得力があるか? 矛盾はないか?
  5. 感情に訴える 人々の経験に基づいた題材/共感が持てる内容か?
  6. 物語性 世界観に引き込まれるか?

 

多少荒削りな部分があるかもしれませんが、基準としては役に立ちそうです。早速、5点満点で集計。その結果がこちらです。

 

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どの作品も読み応えがあって「あーでもない、こーでもない」と表とにらめっこ。甲乙つけがたい内容でしたが、こちらの作品に「ボイジャー特別賞」を決めました!!

 

 

「妻、小学生になる。」村田椰融

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▽試し読み▽

https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=manga&illust_id=63634389

 

▽あらすじ▽

事故で死別した妻が輪廻転生をして、ひょっこり家族の元へ帰ってくる。小学生の姿で…

 

▽感想▽

奥さんのサバサバしたキャラクターと家族愛が印象的で、作品の続き・後日談を一番読んでみたいと素直に思いました。男は手料理に弱いんですよね。五感フル稼働で記憶が蘇ってくる様子が、自分も経験あるなと共感しました。いずれやってくる、大切な人との別れとどう向き合うか、なんて大それたことまで考えてしまいます。

 

村田椰融さんおめでとうございます! ぜひ後日談をお願いします! 

 

以上、ボイジャー特別賞選考の様子でした。改めて「ネーム大賞」参加の全ての作家のみなさん、審査員のみなさま、本当にお疲れ様です! 良いお年をお迎えください!

 

 

\ 感想のコーナー /

 

独断と偏見の感想を最後に掲載します。みなさんはどんな感想を持ちましたか?? 画像をクリックすると本編が読めます。ワイワイガヤガヤ。1つの作品に十人十色なコメントが集まるとワクワクしますよね! 読者の声が一言でも多く作家に届けば何よりです。

 

 

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「シトラス・エイジ」

トラ太郎

 

ここで終わり!? っていうのが本音です…! 不老不死 × パンデミックという展開が新鮮で、物語にどんどん引き込まれました。主人公があっけなく? 事を理解して種の存続のために生きてゆく場面で、もう少し葛藤があっても良いのかなと思いました。

 

 

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ヒューストン

トラ太郎

 

タイトルのネーミングが素晴らしいです。「ムダな時間はない、今という時を大事に」というメッセージが響きました。貯めた時間を使うとき、周りの人の時間はどうなっているの? ルーカス博士は自分の時間を譲渡・分配すればいいのでは? と余計な妄想が広がりました(笑)

 

 

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傍観者たち

砦おくと

 

自分の弱さと向き合う主人公たちの姿が他人事ではないように感じました。読みながら自分の心をグリグリされている感じ…結局のところ、いじめられている人を助けるも助けないも、自分のためにやっているのでは? という葛藤も考えてしまいました。

 

 

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始まりの契約者

トラ太

 

キャラクターが魅力的でした! ヒロインが可愛いです。レーサーの心情表現と決車戦ベルルムのシーンに迫力がありますね。最後の決戦、コース説明のコマで「これは崖から落ちるぞ」と先読みができたので、もっとドキドキしたかったです。あの細い一本杉に鎖を打ち込んで、逆転する展開が少し無茶かも…? と思いました。

 

 

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真白い背中

深空

 

読み終わった後、それはもうドヤ顔で「ねえ、江戸時代、火消しの背中には刺青が彫ってあるって知ってる?」なんて自分から友人に声をかけてしまいました。知的な心をくすぐられます。佐吉がストーリー展開のために、すぐに死んでしまうように見えたのが少し引っかかりました。

 

 

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SANADA6匹

SHIRAYA

 

クロスボウのカマチが有能すぎて、主人公・大助の存在感が薄い印象でした…! 異能蟲の能力者同士で闘う展開でないので、もっとギリギリでなんとか倒す・生き延びる、とハラハラしたかったです。火の異能を水風船で簡単に封じたのは、「えーっ!? あっけない!」って素直に感じました。

 

 

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宇宙人の友達

 

マナちゃんの外見と中身のギャップに萌えました! クスッとくるやり取りもちょうどいいです。1つ、最終ページ「言葉が通じなくても分かり合える」というのが、いまいちピンと来ませんでした(マナちゃんは言葉を理解しているように見える)。「見かけや他人の評価で、その人を判断してはいけない」というメッセージがあると感じました。

 

 

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長ぐつをはいたカエル

井上ハヤオキ

 

画がとても素敵でした。カエルたちの冒険もかわいいですね。個人的にグッズ化希望です! 年の瀬なのでカレンダーなど(笑) モヤモヤしたのが、絵本の中と現実での「カエルに戻りたい」という言葉の意味。[絵本]カエル → 人間になりたい、というのは自分に足りないものへの憧れ。[現実]カエル = 病気である圭介 → 人間 = 元気であった過去の自分と捉えました。圭介が病室で「カエルに戻りたい」と言ったのは、辛い現実からいっそ開放さたい。ルリはキスをすることでそれを肯定した? ということでしょうか?? 最後、ルリが絵本の結末を読んで泣いた理由が少し分かりづらかったです。

 

 

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オバケの幽姫ちゃん

颯騎

 

幽姫ちゃんは一切しゃべらないのに、ここまで展開が進む老夫婦のパワーが凄かったです(笑)ほのぼのしました。一方で、途中からオバケじゃなくても良いのでは?? とも。実は幽姫ちゃんは迷惑に思ってる。霊的な力で老夫婦の危機を人知れず回避させる、なんて番外編があったらぜひ読みたいです!

 

■第9回ネーム大賞 公式サイト

http://mangaonweb.com/contest/name_9th.html