歓喜の歌

mozart

「モツレク」という言葉をご存知でしょうか。モーツァルトのレクイエム、その略称です。クラシックでは、ベートーベン交響曲第九を「だいく」と言ったりするような略称があります。この文を書いている私も高校でオーケストラ部にいたことがあり、懐かしい響きです。

 

 

『モツレク〈学園〉』という本をご紹介します。
音楽に青春をかけた若者たちを描いた、みずみずしくも物悲しい私小説。「僕」と「君」の日々がどのような終わりを迎えるのか、なぜ数ある曲の中から「モツレク」が選ばれたのか。結末まで読んで、その意味を知り、私は胸をうたれました。

 

 

この物語の中で、少年たちは東京文化会館の4階に集まり、ビクターの視聴室を借りて、お気に入りのレコードを次々にかけます。フルトベングラー(フルベン)。「歓喜の歌」こと、ベートーベン交響曲第九(だいく)。クライマックスの「Vor Gott(神の前へ)」というフレーズは、私にとっても青春の思い出です。合唱コンクールで、クラス全員で、喉の奥から振り絞るようにして「フォール、ゴーット……」と絶叫していた記憶が、耳と喉に、よみがえります。

 

 

「十代」
 これが人生を方向づけ、決定づける。十代に「なにか」がなかった人間は、一生「なにか」を掴まない。

(「モツレク〈学園〉」 3.Dias irae 「闘鶏」)

 

自分は、十代で何をしていたのだろう。今の子どもたちは、何をしているのだろう。サッカー? バスケ? 漫画作り? それとも……そういえば、自分は、家でゲームばかりやっていたっけ。

学園という楽園。クラシックという楽園。そして、青春という楽園。しかしそれは、永遠ではない。
青春は、二度と戻ってきません。でも、青春を振り返ることはできます。そして何歳だろうと、心に「ガーッとくる」感動があるなら、きっとそれが青春です。