「見知らぬ明日」を見据えて

いま一番気になっていることは何といっても「ネット社会のこの後」です。……ネットがこれだけの広がりを見せてもいまだに「ネット・モラル」と匿名性の問題、著作権の問題についてはほとんど野放し状態です。……このまま放置されていると、いずれは匿名では何をいっても責任をとらなくていいという、おそろしく「いやな社会」が現出するだろうとは思います。

 

この文章を読んで、どう感じましたか?

これが書かれたのは2006年9月、なんと11年前。9.11は起きたが、3.11はまだ起きていなかった時期の話です。


本音のコラム(中島梓)

 

さて現代はどうでしょうか? まさに匿名性、著作権が大きな問題となり、炎上、中傷、海賊版などの問題が、誰にとっても無縁ではない世の中です。ことにスマホやツイッターによって、誰でも手軽にネットにアクセスできてしまう時代は。

 

ネットだけではありません。違法駐輪。報道被害。騒音問題。過剰包装。
筆者、中島梓が厳しい目で見つめる問題は、今なお古くて新しい問題です。銀行の前を塞ぐ自転車、誘拐された令嬢の顔が掲載された新聞を見て、彼女とともに眉をひそめる読者は、少なくないのではないでしょうか。

 

『グイン・サーガ』自筆の最後の巻に「見知らぬ明日」という副題をつけて世を去った栗本薫・中島梓。私たちは今、彼女が見なかった明日のなかにいます。この、なにもかもが目まぐるしく移り変わる時代に、ふと足を止めて、「ぼくらの時代」を振り返るにあたり、この『本音のコラム』は、よきよすがとなるはずです。