書体には読ませる工夫がギュッ!

文久体は凸版が提供する最新の書体。巨大パネルで存在をアピール!

本などで使われる印刷書体の歴史の展示が東京・文京区にある印刷博物館で始まりました。アナログからデジタルへ、普段あまり気にしない印刷書体の過去・現在・文字のこれからがわかります。(3月11日〜6月18日まで)

この展示で注目なのは、最先端のデジタルの印刷書体はもちろんですが、活版印刷で使われた金属活字関係の展示です。

活版印刷の原理は版画と同じです。出っ張っているところにインクを塗りつけ、紙に転写する。とてもシンプルなものです。

活版印刷で使われる活字の大きさはとても小さく、縦横3〜4ミリほどのものもあります。幕末ごろの金属活字は、木に裏返しで実寸で彫ったものから作られていました。文字を裏返しで彫るというだけでもすごいことですが、画数に関係なく3〜4ミリの正方形の中に彫られます。「優」も「永」も裏返しで3〜4ミリ。そのあといくつかの工程をへて金属活字になります。しかも日本語の本では最低でも5〜6千種類の文字が必要です。つまり、それだけの種類の活字が彫られねばならず、最初工程をになう彫刻師には高度な職人技が必要とされました。

そこに革命的な西洋技術がやってきます。ベントン母型彫刻機です。活字の10倍以上、4〜5センチの正方形の中に文字をスミで描き、そこから作った金属の型をこの彫刻機にセット、そこをなぞるように操作することで、活字を作れるようになりました。

この展示ではその活字の制作に使われたや活字の原図など、貴重な資料が並んでいます。また自分で読みやすい書体を選ぶ体験コーナーもあり、おすすめです。

 

印刷書体のできるまで/活字書体からデジタルフォントへ

 

書体設計の第一人者、鳥海修さんによると;

 

書体は自己主張をしてはいけない。あくまで物語の脇役であり、言葉の僕と心得ている。だからこそ読者は文字を意識することなく物語に没頭できるのだ。
(鳥海修著『文字を作る仕事』(晶文社) p115より)

 

つまり、1ページ、1ページと読み続けるときに意識されないことが書体としての読ませる工夫です。書体にはそんな魅力が詰まっています。

 

印刷博物館エントランス
凸版印刷株式会社が運営する印刷博物館のエントランス
玄関にある展示会のポスターのとなりにはTOKYO2020
玄関にある展示会のポスターのとなりにはTOKYO2020
文久体は凸版が提供する最新の書体。巨大パネルで存在をアピール!
文久体は凸版が提供する最新の書体。巨大パネルで存在をアピール!
日本語で使われるもじはおよそ2万文字。黒っぽいところは漢字です。
日本語で使われるもじはおよそ2万文字。黒っぽいところは漢字です。