何が良いか? そんなの誰もわからない

風が吹けば桶屋が儲かる――そうよく言います。影響はめぐり巡ってとんでもないところに及ぶという例えでしょう。あゝしたらこうなる、こうしたらあゝなる、世の中そうはいかない因果の不思議です。あるお医者が言いました。あの病院はとてもいいと。医療技術や設備を指したわけじゃないのです。駅に近いこと、駅に階段が少ないことを誉めたのです。確かに、健康な人は常々駅の階段などには目もやりません。考えてみると階段の数の多さは増える一方でしょう。

 

Ikegami

駅にこれしか階段がない……確かにイイね。 東急池上線池上駅

 

昔の話になりますが『エマニエル夫人』という映画がありました。この映画はまるで無名の作品で、とんでもなく安価で買い付けられました。ところが多くの女性にも男性にも受け入れられ日本で大ヒットとなりました。性の解放ムードの世の中にピタッと合致したというわけです。買い付けの張本人に、よくぞうまいとこに目をつけましたネと単刀直入に聞いたところ、当たるのか、当たらないのか、自分でもまるでわからなかった……と。ぼそっと言って空に目をやりました。

 

なにがいいのか、どこがいいのか、そんなの誰もわかっちゃいないのです。