シーボルト事件と自費出版

200年ほど前に起きたシーボルト事件をご存知でしょうか。当時の日本では国の地図を国外に持ち出すは禁止されていました。しかし事件の当事者、医師シーボルトは伊能忠敬の地図の写しをこっそり持ち出そうとし、江戸幕府から国外追放、再入国禁止の処分を受けたのでした。Googleマップを手にしている現代では考えられませんが、北海道の正確な形も知られていなかった時代、地図は国家機密だったのでしょう。

 

そのシーボルトの博物学者として才能を発揮したのが『NIPPON』です。昨年の図書館総合展で雄松堂書店(丸善CHIホールディングス)のブースで展示されていました。その稀覯本の図版集は1冊1,400万円。古書部部長による熱い解説に聞き入っていると、この本はシーボルトの自費出版だというではありませんか。その証拠がこの1枚(だそうです)。

 

nippon

LEYDEN, BEI DEM VERFASSER. 1852

 

LEYDEN(ライデン)はオランダの都市の名前、それに続いて、発行者の位置にDEM VERFASSER、つまり著者とあります。古書部部長からの受け売りですが、黒船来航で歴史に名を残したペリー提督はシーボルトの『NIPPON』で日本を研究したそうです。しかしシーボルトが日本遠征の一員として加わりたいと切望したところ、ペリーは日本から追放された男を連れて行ったら、外交が成り立たないと考えたのでしょう。シーボルトの願いはペリーに一蹴され、その後、二人は犬猿の仲になったそうです。