誰が呼んだか「いおりてん」

日本語の文章で、和歌や俳句のはじまりに置かれる記号「〽︎」には「庵点(いおりてん)」という名前があります。いったい誰がつけたのか、これはわかりませんが、「いおりてん」と入力し変換すると、候補の一つにこの記号が出てきます。

 

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iOSで変換するとこのとおり

 

しかしながらコンピュータの世界では、2000年まで庵点は存在していませんでした。きっと和歌を文中に使う作家もいたでしょう。ワープロで原稿を書きながら、なぜ、庵点が変換できないのか、と夜中につぶやいたはずです。

 

必要とする人がいたとは想像されるけれども、存在しなかったのはワープロのメーカーのせいではありません。

 

ワープロのメーカーは日本工業規格(JIS)に沿ってちゃんと仕事をしていました。そうなんです、2000年以前に使われていたJIS X 0208には庵点が含まれていなかったのです。ですからワープロのメーカーはこの庵点を出すことはありませんでした。

 

今のコンピュータの文字はJIS X 0213に沿って作られています。JIS X 0213は全部で11,233字です。JIS X 0208で決められていた文字種類6,879文字を4,354字拡張して作られています。ですから今、私たちはとてもたくさんの日本語の文字がコンピュータでもスマートフォンでも、電子書籍でも使える、というわけです。

 

この記号は、以前は「歌ひっかけ」とも呼ばれていたはずですが、皆さんは「庵点」「歌ひっかけ」「歌記号」何と呼んでいましたか?