3000人のスーパー銭湯@東京

純烈は2010年に酒井一圭かずよしを中心に結成された、歌って踊れるムード歌謡グループ。現在のメンバーは酒井をはじめ、白川裕二郎、小田井おだい涼平、友井雄亮、後上ごがみ翔太の5人。リーダーの酒井が「百獣戦隊ガオレンジャー」でガオブラックに変身する牛込草太郎を演じていたのをはじめに、5人中4人が特撮ヒーロー・ドラマにレギュラー出演した経験を持つ変わり種だ。デビューから数年の間はいわゆる下積みが続いたが、2014年から女性ファンの間で人気を集めている『演歌男子。』(CS歌謡ポップスチャンネルで放映されている歌謡バラエティー番組。2015年に『NHK紅白歌合戦』初出場を果たした山内惠介を筆頭に、若手の実力派イケメン歌手が出演するほか、番組出演者によるホール・コンサートも開かれて一大ブームを巻き起こした)の波に乗って人気を上昇させ、いよいよ「夢は紅白、親孝行」のスローガン達成も現実味を帯びてきた。そんな5人が、過去最大の東京国際フォーラム・ホールCで昼夜2回の公演を開催。ここでは、夜の部についてレポートする。

2017年11月9日 東京国際フォーラム・ホールC
純烈祭!全員集合 【夜の部】花鳥風月の巻

夢を叶える純粋で烈しい気持ち

リーダーの酒井一圭が客席に向けて声を上げた。

「お蔭さまで、これだけ沢山の皆さんの前でライブができるまでになりましたー!」

そう、ついに純烈の5人は、座席数1502の東京国際フォーラム・ホールCで昼夜2回の公演を行うまでに成長したのだ。

世間は彼らのことを“スーパー銭湯アイドル”と呼ぶ。これは主な活動の場がスーパー銭湯だったため。例外的に有名歌手が出演することもあるが、スーパー銭湯のステージで歌謡ショーを開くのは、ほとんどがさほど知名度の高くない歌手。

純烈はデビューしてから何年もの間、このスーパー銭湯を主戦場にしてきた。多くの客は入浴が目的で、歌謡ショーはついでに観るもの。さらには自分たちが楽しむカラオケの方が重要で、売れないプロ歌手の歌はそれ以下の扱い。そんな環境でも“夢は紅白、親孝行”を合言葉に、彼らが活動を続けてきたのは、夢を叶えたいという気持ちが純粋で烈しかったから。

結成から10年、その想いは全国のファンの心を摑み震わせて、とうとうスーパー銭湯とは桁違いの観客を集めるまでになったのだ。

拍手、手拍子、歓声、悲鳴

「真剣勝負の巻」の副題が付いた昼間の公演では、三山ひろしをはじめとする、同じ日本クラウン所属歌手5名の当日限定ユニット「分烈」とののど自慢対決などを盛り込み、最新シングルの「愛でしばりたい」から「明日があるさ」まで全32曲のステージを披露したメンバーたち。

その閉演から、やや開幕が遅れたとは言え、まさに休む間もなく始まった「花鳥風月の巻」は、昼の部とは内容をがらりと変えた芝居仕立て。こうした構成は過去の公演でも採り入れられていたものだが、メンバーは実際の客席を劇中のそれと見立てて歌い演じる。観客はそんな彼らを観ているだけなのだが、時に芝居の中に身を置くことにもなり、知らぬ間に自らも劇中に入り込んでいる感覚を味わえるという趣向。

今回の芝居の主役は、最年少で唯一役者の経験を持たない後上翔太。劇中では、ふとしたことから純烈に誘われながら、自分だけに他のメンバーと同じような経歴がないことにコンプレックスを覚えながらも活動を続ける、元大学生の役。ここにメロディー・チューバック演じる彼女が加わって、後上は仕事に、人生に、そして恋愛に悩む姿を演じる。

物語と絶妙に絡ませながら歌われたのは、「グッド・バイ・マイ・ラブ」(メロディー)、「真実・愛ホテル」(ゲストのレーモンド松屋と純烈の共演)、「2億4千万の瞳」(後上)、「あなたのブルース」(小田井涼平)など全19曲。リード・ボーカルを務める白川裕二郎の歌声は、グループの成長とともに魅力を増して、実にセクシー。歌声だけでも女性ファンをとろけさせてしまいそうな危険な香りさえ感じた。

ステージの途中にはサンバやタヒチアンのダンサーも登場して舞台を盛り上げ、コンサートは時に過熱し、時にセンチメンタルな色を帯び、そしてまた時に笑いを誘うという、純烈ならではの娯楽の幕の内弁当状態。ダンスの切れ味が抜群の友井雄亮は、演じる際にはいわゆるボケ役のキャラでユーモラスな雰囲気を加えるが、こうした個々のパフォーマンスの幅広さも彼らの大きな武器だ。

そうした5人が作るステージが、かなりのボリュームながら胃にもたれる感じがないのは、観る側も一緒になって燃焼できることと、リーダーの酒井一圭をはじめとするメンバーたちの絶妙な計算とセンスのためだろう。

男性の姿は数えられるほどで、客席を埋めたファンの中心は60代と思しき女性。一般には落ち着いているはずの世代だが、純烈ファンとなると分類が別なのか、場内のエネルギー量の大きいこと! そして、大人の分別などどこへやら、色とりどりのライトを振りながら、拍手、手拍子、歓声、悲鳴と発散に次ぐ発散。

酒井が、純烈結成の理由として、高齢化社会における娯楽の重要性を挙げていたが、その予見が間違っていなかったことを、ホールCの風景は如実に語っていた。

「俺たちは諦めない、絶対に出る!」

コンサートの終盤、酒井はファンに向けて訴える。

「紳士の皆さん、夢は死ぬまで持つべきです。『お前たちが“紅白”に出るなんて無理』と言う人もいるけれど、俺たちは諦めない、絶対に出る!」

熱さを増す会場の空気。この日初披露された新曲「愛が裁かれるとき」、デビュー曲の「涙の銀座線」と続いてメンバーがステージを去ると、間を置かずにかかる本気のアンコール。

メンバーがステージに戻って「純烈一途」が始まると、ほとんどの観客が立ち上がって手拍子を始める。そして最高潮の中、「ひとりじゃないから」へと続き、ラストはステージに出演者が勢揃いして閉幕。

「来年はホールA(座席数5012)で!」という酒井の言葉を胸に会場を出るファンの顔は一様に紅潮して、まるで湯上がりのよう。

過去最大の会場で、メンバーには緊張もあるのではと思っていたが、それは余計な心配。彼らは国際フォーラムでさえ、いつもと同じ熱気で包んでしまった。

おしゃれなイケメンでありながら、気さくでちょっとHな(主に小田井の役回りだが、男女問わず笑わせながら下品にならないさじ加減は見事)純烈の生み出す空気は、場所がどこであろうが、湯の香ただよう宴会場のそれ。息苦しいことの多い今の世の中で、彼らが愛され求められるのも当然のことと言えるだろう。

残念ながら今年は夢を叶えられなかった彼らだが、来年は東京・渋谷のあの会場をスーパー銭湯の熱気で包んでほしいものだ。

(文・寧樂小夜)

当日(夜の部)の曲目

  1. キサス・キサス東京
  2. 噂の雨がふる前に
  3. グッド・バイ・マイ・ラブ(メロディー・チューバック)
  4. 真実・愛ホテル(レーモンド松屋 with 純烈)
  5. 2億4千万の瞳
  6. あなたのブルース
  7. お金をちょうだい
  8. 恋のキャンドル
  9. グッド・バイ・マイ・ラブ(メロディー・チューバック)
  10. 愛でしばりたい
  11. 六本木は嫌い
  12. 恋は青いバラ
  13. 今夜はドラマチック
  14. 恋は火祭り
  15. ふたりで一緒に暮らしましょう
  16. 愛が裁かれるとき
  17. 涙の銀座線
  18. 純烈一途
  19. ひとりじゃないから
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